【モンゴル旅2024】#1
昨年秋、生徒2名を連れて日本から参加した、ラスベガス(米)で開催されたイベント「第1回モンゴルコントーションの集い “The 1st Mongolian Contortion Convention 2024”(以下、MCC)」。
主宰のひとり、モンゴル人元コントーショニスト、アンジェリークさんが「2回目はいつ開催するか、そもそも毎年開催するのかもまだわからないわ」と話していたのが、「今年第2回目を開催することにしたわ!必ず参加するように!」と連絡をくださったのが今年の春先でした。
期間は9月6~8日の3日間。
場所はついに、モンゴルコントーションの故郷、モンゴルで!
これまでの開催地はアメリカやドイツで、モンゴルコントーションなのにモンゴルで開催されたことがありませんでした。
そのため参加者の多くはアメリカやヨーロッパの人たち。モンゴルにいる多くのコントーションを学ぶ生徒たちや指導者たち、パフォーマーたち、そしてサーカス関係者たちが参加できずにいたんです。
イベントの趣旨としても、レベルや背景に関わらず「コントーションが好きな人はみんな集まれ~」という、交流を主としたものでした。
それが今回は首都ウランバートルが会場ということで、コンベンション内容は一変!
雰囲気も参加人数も、何から何まで昨年までとは大違いでした…!
2009年の「国際コントーション・コンベンション」(ICC ; International Contortion Convention)当時から参加している身としては、戸惑いました。
ひとことでいえば「モンゴルコントーションの本気を見た!さすが!」という感じでした。
同時に舞台裏では…、まぁすったもんだありましたよ(笑)
終わった今となっては笑い話ですが…。早速お話していきますね。
今回、同行したメンバーはHonoka先生、Yuuri先生、大人クラス生徒のNaruさん。みんな、モンゴルへ行くのは初めてで「コントーションをやっているからには、一度は行ってみたい!」と勇気を出して参加しました。それに息子ふたり、SotaとToruを連れて行きました。
■8月20日。もーこ、息子2人を連れてひと足先にモンゴルへ渡りました。
モンゴルの街並み。
■8月27日
MCCの10日前。ウランバートル市郊外のチンギスハーン国際空港に生徒たちが到着しました。現地のコントーション教室で指導を受けたり、サーカス学校を見学したりしようということで、早めにモンゴルに入るようなスケジュールを組んでいたんです。
空港から都心部へ、慢性的な渋滞でなかなか進まない車の中で、鳴
り響いたスマホ。見ると主宰のアンジェリーク姉さんからではないですか。
「皆さん、無事にモンゴルに着いたかしら?ようこそ、モンゴルへ!早速なのだけど、明日劇場に来られますか?リハーサルをすることになったので。午後2時に来られる?じゃあ、よろしくね。また明日~」
イベントの中には2日間のショウが予定されており、私たちはそのショウに出演することになっていました。リハーサルは本番直前の数日間と知らされていたのですが、明日もやることになったの?
助手席に座っていた私は後ろを振り返り、「ねぇみんな、明日、劇場へ行ってリハーサルすることになったよ。たった今!」と伝えると「えぇっ明日ですか?随分いきなりですね。はい、わかりました」と、外の風景の中にゲルや馬の姿を無邪気に楽しんでいた我が日本人チームが、豆鉄砲をくらった鳩のように目を丸くしました。
私は「これからイベントが終わるまで、こんな感じで突然予定が入ったり、物事が決まったりするから…。すべてがモンゴルのスピードとやり方で進んでいくから、いきなりどんなことを言われても、はたまた言われなくても驚かないで、平常心でね」と3人に伝えました。
そして、翌日。
■8月28日
言われた時刻に余裕をもって、今回の会場であるウランバートル劇場に到着。
劇場の舞台は、すでにたくさんの子どもたちや指導者たちでいっぱいです。辺りを見回しましたが主催者の姿がありません。まわりのひとに尋ねると「あぁ、日本人チームね!あなたたちのことは聞いているわ。14時から演技を見せてね。それまでちょっと待ってて」。
生徒たちはいつ呼ばれてもすぐ行けるようにと衣装を着て、ウォーミングアップをしながら、待つこと4時間。
17時をまわりましたが、相変わらず舞台はひとでいっぱいで、空く様子がありません。「私たちの順番はまだですか?」と何度聞いても返ってくるのは「あなたたちの順番は次だから。もう少し待ってて」。
「仕方がない。今日はもう呼ばれなさそうだから、帰ろうか」と、帰る準備を始めたところ「おーい、日本人チームはどこだ?リハーサルを始めるぞ!」と大きな声が聞こえるではありませんか。
背負いかけたリュックを下ろし舞台へ行くと、初めて会う舞台監督の太った男性から、マイクで話しかけられました。
「今から君たちの演技を見せてもらう。演技はいくつあるの?え、ひとりひとりの演技だって?全員でひとつの演技じゃないのか?着物は持ってきた?え、持ってきていない?和傘は当然、あるだろう?何、無いだって?扇子は?」
…あれ?何の話ですか?全員でひとつの演技?着物と和傘と扇子だって?
主催のアンジェリークさんとは半年以上前からやり取りをしていて、演技を行う生徒の情報は数か月前に知らせています。ソロ演技は3分までとのことで、そのとおりに日本で演技を用意して、それぞれの動画も事前に送ってあります。着物を持ってきてほしいとは言われていましたが、着物風のコントーションの衣装でもよいと言われていました。ここに来て話がまったく噛み合いません。それに、アンジェリークさんご本人もいらっしゃいません。
とりあえず演技を見ることにしようと、私の生徒たちがひとりひとり披露しましたが、舞台監督と回りのモンゴルの人たちは何やら渋い表情です。昨年までは、コントーションを始めたばかりの生徒たちや熟練生、なかにはプロフェッショナルなど様々なレベルや年齢層のひとたちがいましたが、演技を終えるとお互いに拍手を送り合い、舞台まわりのスタッフたちは各演技を見て必要事項を確認し、本番の順番を決める、くらいのリハーサルだったのですが…。
演技を終えると舞台監督は私にこう言いました。
「日本人チームには、全員で、日本の文化をわりやすく見せるような演出をしてほしいんだ。着物を着て、和傘を持ったり扇子を持ったりして、日本舞踊を踊ったりしてほしい。君たちの演技中、背景には桜や富士山を出して、これぞ日本だ!という演出にしたいんだ。どうして着物を持ってきていないんだ?今見せてもらったひとりひとりの演技は、僕のショウには合わない。だから君たちをショウに出さないことにする」
今度は私が豆鉄砲をくらった鳩になりました。
えぇぇーっっっ
私たちをショウに出さないことにする!?
《続く》
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