モンゴルコントーション教室のクラス名「初級」「中級」の次は「上級」ではなく…?

暖かくなってきたので、爽やかな写真をトップ画像に選んでみました^^

さて、

私がモンゴルで通っていたコントーション教室では、生徒のレベルに応じて「初級」「中級」「上級」「パフォーマー」と、主に4クラスに分けて、レッスンや練習をしていました。

初級はモンゴル語でАнхан шат(アンハン シャト)。

Анх(アンハ)は、初めて、という意味です。シャトは階段や段階という意味なので、日本語でもそのまま「初級」という意味ですね。

当時4~6歳の初級クラスの少女たち。みんな、コントーションを始めて数か月~半年くらいだったかな?私も、もちろん初級クラスからのスタートだったので、彼女たちは私のチームメイトです(笑)
4~6才のチームメイト、私は22歳…。ひとりだけでかい私…(笑)2007年5月。スフバートル広場で開催されたサーカス公園のテントの前で、コントーション教室の少女たちと一緒に。

中級はДунд Шат(ドンド シャト)といいます。こちらも、Дунд(ドンド)は中くらいの、間の、という意味なので、そのまま「中級」という意味です。

2007年8月 ウランバートル市にてもーこ撮影。
2007年8月 ウランバートル市にてもーこ撮影。
2011年2月 ウランバートル市にてもーこ撮影。

でも上級は、違うんです。

日本語で「上級」をそのままモンゴル語にするとДээд шат(デード シャト)です。

単に、技や曲がるレベルが上だから、ということならデードシャトなのですが、モンゴルのひとびとは実際に、そのようには呼んでいませんでした。

では、中級のひとつ上のレベルをどのように表現していたか?といいますと…

Гүйцэтгэх шат(グイツェトゲフ シャト)と呼んでいました。

Гүйцэтгэх(グイツェトゲフ)の意味は、「完成される、遂行される」という意味です。

仕事などで「到達すべき点に、責任を持って到達させること」「完了させること」というニュアンスがあります。

より曲がれるようになったから…、難易度の高い技ができるようになったから…。

レベルが上だから「上級」というのではなくて、「基礎がある程度できるようになり、オランノガラルトをいよいよ極める段階―芸術と呼ぶことのできる点まで、責任を持って到達することを心に約束したひとたちの段階」ということで、Гүйцэтгэх(グイツェトゲフ)ということばがつけられているのだと、私は認識しています。

デード(上の)シャトでもなく、Sクラスでもなく、グイツェトゲフシャト。

倒立バーを使った4人コントーションの演技。2011年2月 ウランバートル市内のコントーション教室にてもーこ撮影。
ズゥブニクをしながら、手足でフープを回すスゴ技。2人コントーションの演技。2011年2月 ウランバートル市内のコントーション教室にてもーこ撮影。
2011年2月 ウランバートル市内のコントーション教室にてもーこ撮影。
2011年2月 ウランバートル市内のコントーション教室にてもーこ撮影。
2007年 武漢国際サーカスフェスティバル(中国)にて、6人コントーションの演技。もーこ撮影。

コントーション、特にモンゴルのコントーション「オランノガラルト」は、びっくり人間ではなくて、芸術です。

デードシャトではなく、グイツェトゲフシャトと呼ぶモンゴルのひとたちが、コントーションのことをどのように認識して、どのように扱っていたか…。

芸術として、極めるべきものとして、到達しなければいけない点があるものとして、大事に受け継いできたことが、このひとつのことばににじみ出ていますよね。

私は、モンゴルのひとびとが中級より上のクラスをグイツェトゲフと呼ぶことを知ったとき、ひそかに感動しました。

技能的なことだけでなく、精神的なこともすべてを含めて「自ら責任を持って到達すべき高みに達するまで、ちゃんと続けることを誓う」ということ…。

相当な覚悟が要ることですね。

だから本当は、うちのスタジオのクラス分けでも、中級の上は「上級」ではなくて、「グイツェトゲフ」という名前をつけたいんです。

でも、モンゴル語のままだと言いにくいですし、日本語にするとしっくりくることばがないなぁ…。

「遂行」クラス?「完成まで頑張る」クラス?

うーん…。

…我ながら、センスが感じられません…^^;

良いことばを思いついた方は、教えてください。

グイツェトゲフということばからは、もうひとつ…

できることが増えて、柔軟性が上がって、演技も良くなって、クラスが上がったとしても、コントーショニストたるもの常に謙虚な気持ちでいること、という人生の徳というか、教えのようなものも感じますよね。

実際…

上級クラスになっても、パフォーマーになっても、まだまだ道は遠く、できないことばかりです。

逆に、できることが増えれば増えるだけ、「道のりは、なんて遠いんだ…」と絶望したくなるほどです。

できる技やポーズがひとつ、ふたつ増えたところで、とてもじゃないけれど「オランノガラルトの到達点まで来た!」という感覚は持てません。(もし持っているひとがいたら…謙虚さが足りないかも)

それは、モンゴル人コントーショニストとして長年パフォーマンスをしているひとたちも、口をそろえていうところです。

以前、ある仲の良いモンゴル人コントーショニストが「私はまだまだです」と話しているのを聞いて「あそこまでできるようになっても、まだそう思うんだ…!」と驚いたことがありました。

ズゥブニクに片手倒立バランス、組み技の上も土台もつなぎもこなし、常に海外で仕事をしているような子です。

こちらからすると「もう、あなたにできないことは無いんじゃない?」というようなレベルの方が、ですよ!?(もちろん、つま先も膝もよく伸びていて、キレイ!)

ということで…

まとめ。

上級クラスやパフォーマーをやっているような、ある程度できるようになった皆さんには、「グイツェトゲフ シャト」の意味をよく考えていただけたらと思います。

一方、初級、初中級、中級レベルの方は、まだそんなことを気にしなくてよいです!今読んだ記事の内容、すべて忘れてください(笑)!

「何を目指しているのか?」を見失わないようにしながら、

必死に、がむしゃらに、とにかく練習に練習を重ねて、ひとつ上のクラスを目指していただきたいなと思います^^/

今日からまた、新しい一週間が始まりましたね。

今週もよく曲がりましょう~!

この週末のレッスン。こちらは【大人 オールレベル】クラスの様子です。キッズも大人も、よく曲がりました!

こんな感じで、もーこがコントーションに関する記事を書いています。

日本でコントーションを芸術、文化として広めるため、日本初・唯一のコントーション専門スタジオを運営し、4人の子どもを育てながら、書いています。

へぇー

面白いな~

頑張れ~

もっと曲がれ~

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