サーカスを訪ねるラスベガス02《ウルジーさんのコントーション教室》

MCCにはモンゴル人コントーション関係者が集っていたので、多くの方々とお話することができました。

会場で知り合ったモンゴル人コントーショニストのひとり、ウルジーチメドさん。

MCC会場で、ウルジーチメドさんの生徒さんたちによるデモンストレーション。奥で立っているピンクの服を着ているのがウルジーチメドさん。

彼女はご主人とともにラスベガスの空港近くで教室を開いているとのことで、興味津々!

「明日もレッスンやってるよ。良かったら参加する?」と言っていただき、「Of Course!」と即答。

MCCを終えた翌日、生徒たちと一緒に訪ねました。

(こんなこともあろうかと、MCC終了後のスケジュール、余分に1日とっておいたのです。良かった!)

トレーニングアカデミー「K-Star」は、ウルジーチメドさんとご主人のフィリップさんが3年ほど前に設立した、まだ新しい教室です。

「もしあなたたちが希望するなら、レッスンが始まる前に来て、自主練習しててもいいよ」と言ってくださったので、少し早めに伺いました。するとご主人のフィリップさんが迎え入れてくださり、教室のことを色々と教えてくださいました。

ご主人のフィリップさんはマーシャルアーツのチャンピオン!幼少期よりカンフーなどに取り組んでおり、中国に学びに行ったことも。その後、シルク・ドゥ・ソレイユのコーチ兼振り付けを務めていたこともあるという経歴の持ち主。K-Starではマーシャルアーツの指導を行っており、彼の元で学ぶ生徒たちはキッズから大人まで大勢いました。

しばらくすると、ウルジーさんもやってきました。

ここで、ウルジーチメドさんの経歴をご紹介しますね。

5歳のときにコントーションを始め、7歳になると国営サーカスの専属パフォーマー(サーカスショウに出演するのはもちろん、給料を得ながら練習を行うという、実力を認められた者)となったという、ものすごい努力家です。

ウルジーさんが、NHKのドキュメンタリー番組に出たときの映像を見せてくださいました。白黒の映像を前に、「朝起きると学校へ行く前に練習、学校が終わるとサーカス場で練習、帰宅したら寝るまで自宅で練習…そんな毎日を送っていたよ。」と話してくださいました。

以前、NHKのドキュメンタリー番組に出演したこともあるウルジーチメドさん(彼女が8歳の頃)。

8歳のときにシルク・ドゥ・ソレイユの創設者 ギー・ラリバテ氏のスカウトにあい、渡米してから約30年間、こちらのサーカスで生きているという筋金入りのアーティスト(現在は指導者)です。

現在は2人のお子さんを育てながら、指導を行っています。

「今は指導と育児とでなかなか自分の時間が取れなくて…。ここ一年くらい、自分の練習はほとんどできていないの。でも、やらなきゃね!」と、特別に「腰入れ」(コントーションのウォーミングアップ)の様子を見せてくださいました。
スパイダーの動きをするウルジーさん。「本当にここ1年、何もやっていないんですか…?」と疑いたくなるくらい柔らかい!
もちろん、柔らかいだけではありません。倒立バーを使った片手倒立も、お手の物です。

広さも高さも申し分ない教室!

子どもから大人まで約30名の生徒たちがコントーションを学んでいるとのことでした。

ところで、私がモンゴル人たちと話しているといつも感じることがあります。それは彼女と話しているときも…。

「こういう動きができる股関節を持っていないと、コントーションとはいえない」「ハンドバランスのないコントーションは、コントーションではない」のような発言が随所に出てくるのですね。

それで、モンゴリアンコントーションには確固たる「基準」があるんだ、ということに気づくわけです。

コントーションは競技ではないので、例えば体操のように、この技は何点などという決まりはありません。こうでなければいけないというような、明確に定められたルールや書かれた決まりはありません。

実際、モンゴル以外の国(日本も含めて)のコントーショニスト(と自分自身で名乗るひとたち)は、より自由な表現を行う印象があります。倒立をしなかったり、コントーションというよりもダンスのようだったり、アーティスト自身の柔軟性がそんなに高くない場合も「コントーション」と自称するのを見かけます。自由な表現というか、未熟なレベルという感じで、違和感を覚えることも多いです。

モンゴル人コントーショニストにおいて「自称コントーション」はありえません。倒立が入っていないコントーション?柔軟性の低いコントーション?ありえません。モンゴル人コントーショニストは皆、一定のレベルを満たしています。

それは、指導者からそのような教育を受けること(これがコントーションで、これはコントーションじゃない。コントーションとはこうあるべき、というような指導を受けます)、周りのレベルが高いことも関係があると思いますが、ある程度の月日、真剣に取り組んでいると腹の底から生じてくる、オランノガラルトに対するリスペクト、そして、自分自身が芸術に従事しているという誇りを大切にしているからだと感じます。しょうもない曲がりをひとに見せるなんて、リスペクトも誇りもないようなことは、神への冒涜に似た気持ちになり、できないんだと思います。そこまでじゃなくても、恥ずかしいですしね…。とにかく、モンゴルの人々は中途半端な曲がりは、やらないです。

こういった点で、やはりモンゴリアンコントーションはほかのコントーションとは異なり、特徴的だと思います。コントーションじゃなくて、「オランノガラルト」=「曲がる芸術」なんですよね。

ウルジーさんの指導を受けるKureha。
同じく、ウルジーさんに見てもらっているKanon。
生徒たちにお手本を見せるウルジーさん。

「もしあなたたちが希望するなら、レッスンが始まる前に来て、自主練習しててもいいよ」と言ってくださったので、少し早めに伺いました。するとご主人のフィリップさんが迎え入れてくださり、教室のことを色々と教えてくださいました。

ご主人のフィリップさんはマーシャルアーツのチャンピオン!幼少期よりカンフーなどに取り組んでおり、中国に学びに行ったことも。その後、シルク・ドゥ・ソレイユのコーチ兼振り付けを務めていたこともあるという経歴の持ち主。K-Starではマーシャルアーツの指導を行っており、彼の元で学ぶ生徒たちはキッズから大人まで大勢いました。
教室内の壁中に貼られた、歴史。
エントランスのグッズ売り場。

さて、K-Starでレッスンを見学していると「私、前に日本に行ったことがあるんですよ」というあるモンゴル人コントーショニストが話しかけてくれました。

現在はシルク・ドゥ・ソレイユのショウ”O”に出演しているというオッドマーさん。

「1990年代、私が14歳のとき、10名ほどのグループで日本に渡り、カキヌマサーカスというところで働いたことがあります。」と話してくださいました。

そういえば、MCCで出会ったまた別の方は「私は昔、リトルワールドで働いたことがあります。とても良い思い出です。リトルワールドではまだサーカスをやっていますか?」と聞かれました。

モンゴルのことわざに「(初対面同士でも)しばらく話していると、親戚になる」というものがありますが、まさにそうだなぁと感じますね。

フィリップさん、ウルジーさん、ありがとうございました!!

今後もお訪ねしようと思います。

■K Star トレーニングアカデミー https://www.kstarlv.com/


結局20時過ぎまでお邪魔してしまいました。

その後、シルク・ドゥ・ソレイユ「KA」を観に行きました。

毎日がコントーション、毎日がサーカスサーカス。

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